とある夫婦の部ログ

平成生まれの夫婦の部活動記録

「仲間への信頼」が「攻めのバトン」をもたらしたのではないかと考えた話(東京オリンピック陸上男子400mリレー)

夫です。
東京オリンピックも無事に?閉幕しましたね。これまで元陸上部として、陸上男子400mリレーについてつらつらと書いてきました。

yuru-koro.hatenablog.com

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 さて決勝の結果はご存知のとおりで、さらに今さながらの感じがしますが、このリレーを見て個人的に思ったことを書き残しておこうと思います。

「攻めのバトン」

「攻めのバトン」という表現がクローズアップされています。メンバーとして走った選手だけでなく解説の方など色々な陸上短距離関連の方、さらにリレーに興味を持ってくれた多くの方々がメディアでこの表現を、色々な場面を語ってくれています。イチ陸上経験者、イチ400mリレー経験者としても、今回の東京オリンピックの決勝のレースはまさにその通りだったなと思います。

 

この「攻めのバトン」という簡単な6文字の表現は、同じ6文字で「仲間への信頼」とかって言い換えられるんじゃないかなって思いました。(クサイセリフですね。。。笑)

 

400mリレーのバトンパス

400mリレーにおいて、受け手は渡し手(前走者)がある地点まで来たら走り出します。この時に、受け手は全力で飛び出します。必ず、渡し手が追いついてバトンを自分に渡してくれると信じて、目の前にある自分のレーンにだけに集中します。そして、渡し手の合図で一瞬だけ腕を上げ、バトンをもらいます。

 

バトンの確実な受け渡しが目的であれば、受け手はゆっくり後ろをチラチラ見ながら走り出してもいいのですし、渡し手受け手の両方がお互いに少しスピードを落としてもいいのです。しかしそれでは確実にタイムロスですし、渡し手の減速が大きくなったり、受け手の十分な加速ができなかったりします。0.01秒のタイムを争う400mリレーでは少しのロスもしたくないのでそれは現実的ではありません。

 

東京オリンピック日本代表の走りは・・・?

今回の日本代表は(おそらく)予選は、通過して決勝に進むことを第一目標としていたのだと思います。持ちタイムや過去の世界大会の結果からも十分それが可能だったのでしょう。そして(おそらく)決勝は、未知の領域である金メダルを目指すに当たって、これまでと同じことをしていたのでは到底到達できないと思って、一か八かの勝負に出たのだと思います。それがつまり「攻めのバトン」であり、受け手のスタートする位置をほんの少し後ろにずらすという戦略です。予選と同じことをして、確実にバトンをつないで走れば、少なくとも8位入賞は果たせるのですが、目標はそこではなかったのだと。まだ見ぬ世界には、いつでも挑戦することが必要なんだと思いました。

 

「攻めのバトン」=「仲間への信頼」

改めて「攻めのバトン」は「仲間への信頼」だなんて、クサイセリフに聞こえるかもしれないですが・・・自分の小中高の9年間の陸上経験を振り返って、もそうだと言い切れます。決して自分はリレーで素晴らしい成果を残せた訳でもないです。しかしそんな自分でもこのように思えるのですので、ましてや日本代表ともなれば、背負うものも大きく重く、その思い(仲間への信頼)も、もっとあるのだと思いました。

 

この「仲間への信頼」がないと、受け手は全力でスタートを切ることはできないです。個人種目の100mや200mは、当然後ろのことなんて考えなくてもいいので(後ろからは走ってくる人はいないので)、迷うことなくピストルの音を聞いて、全速力で駆け出せばいいのですが、400mリレーについてははそうはいきません。決定的な違いは、後ろから仲間が来るのです。それでいて、全速力で駆け出すことも求められます。

 

どこかで仲間を信頼していないと、信頼をしていたとしてもどこかで少しでも不安があると、知らず知らずに少しブレーキをかけてしまいます。
「もしかしたら追いついてこないんじゃないか・・・」
「追いついてくれないとバトンが繋がらない・・・」
「バトンゾーン(テークオーバーゾーン)がもうすぐに迫っている・・・」
なんて思ったりして。

 

そんな数々の恐怖に打ち勝って「必ず追いついてくれる」と信じて走り出すとてもとても大きな勇気が必要なのだと思います。

 

それを東京オリンピックの決勝という舞台でやり遂げた山懸選手は本当に素晴らしい勇気と、多田選手への信頼を持っていたのだと思います。

 

「攻めのバトン」を成し遂げるには・・・リレーメンバーはライバルであって仲間でもある不思議な関係

ところで「攻めのバトン」として、受け手が全力で駆け出す前提には、そもそも練習が不可欠です。渡し手がどのような走りの特徴(スタートが早いのか、後半でも伸びてくるのか)があるのか、声を出すタイミング(追いつきそうなタイミングで声を出すのか、追いついてから出すのか)、バトンパスの渡し方(手が出たらすぐ渡すのか、一呼吸おくのか)など、人によって異なる癖を知っておくことが必要です。

 

普段は個人種目のライバルでありながら、リレーになると信頼する仲間になる、不思議な関係性を持つのが陸上なのです。日本代表は多くの合宿を通じてリレーメンバーとしてのチームワークを高めてきたと言われています。代表が決まってオーダーを決めるのではなく、候補者を複数呼んで、色々な走順を試しておいたりするそうです。

 

そしてどんなに本番に近いようにウォーミングアップをしたとしても、本番はやはり別物です。練習では決して出ない量のアドレナリンが出て、緊張も重なり、そして隣には相手チームがいます。いろいろな要素を総合的に考慮して、受け手は本番でのスタートの距離を決めます。もちろん、渡し手とそしてチームメンバー内で確認、合意を取ります。(少なくとも自分の経験ではそうでした)

 

蛇足(自分の経験談

「400mリレーのバトンパスは渡し手の責任」と教わってきました。例え、どんなに練習をしたとしても、練習で素晴らしいバトンパスができたとしても、一瞬の判断ミスで、受け手が早く出てしまう、もしくは渡し手が失速してしまうことも当然、可能性として有り得ます。そんな時、渡し手は躊躇することなく、「早い!」などと言って、受け手に届かないことをすぐに知ってスピードダウンしてもらうことが必要です。どんなに全速力同士でのバトンパスだったとしても、決められた区間内でバトンパスができなければ失格となります。迷っている間にすぐに時間切れになりますので、これも素早い決断が求められるのです。

 

ちなみにのちなみに、「1600mリレー(1人400m走るリレー)のバトンパスは受け手の責任」とも教わりました。400mの終盤は正直意識飛びかけていますので、渡し手に余裕なんて一切ありません。ですので、受け手が丁寧に「もらってあげる」という考えなのかもしれません。(強豪校などは違う考えかもしれませんが・・・)

 

 

 改めて、東京オリンピックのリレーを見て、陸上日本代表400mリレーチームの「攻めのバトン」を使うという、とても勇気ある決断とその実行について感激したのでした。そして、少し昔のことを思い出してつらつらと書いてみたのでした。

 

以上です。